350349 [sage] :03/07/22 09:55
確か自分が小学校低学年くらいの夏休みだったと思う。
お盆に父の実家へ家族全員で泊まりにいっていた。
新潟県の田舎の農村で、田んぼだらけのいかにも
のどかな田舎?という感じの所で、
漏れは毎年夏にそこで過ごす数日を楽しみにしていた。

実家には犬が一匹いた。
白い雑種の犬でギンって名前だったw
人懐っこくて滅多にほえることのないい犬で、
実家のじいちゃんとばあちゃんもとてもかわいがってた。

漏れもギンが大好きで、田舎にいったときには
いつも散歩に連れていったもんだった。

その日も漏れはギンと散歩に行った。
日は傾きかけていたけどまだまだ暑い、
ヒグラシがたくさん鳴いていた夕方だった。
(汗ばみながら『カナカナカナ?』って声を聞きいて
ギンと歩いてたのをよく覚えてる)

353349 [sage] :03/07/22 10:35
漏れはギンと田んぼ道を歩いてた。
舗装されていないじゃり道で、人は誰一人見かけなかった。

とにかく田んぼだらけで、どこまで行っても田んぼ田んぼ田んぼ!

だんたんと山の方に近づいてもまだ田んぼなんだよ。

だけど、山に近づくにつれてアブ(なのかな?)みたいな虫が沢山
ぶんぶんと襲ってきて、暗くもなってきたし帰ろうかなと引き返した。

するとギンが動こうとしない。
しっかり足を踏ん張ってその場から動こうとしないんだ。
うんちでるのかな?って思っていたら
(本当にそう思ったんだよ…)
田んぼに向かって
『グルルルルゥ…』
とうなり始めた。

田んぼに何かいるのか?
夕闇の中目を凝らしてみると…

354349 [sage] :03/07/22 10:36
??なんだろう。
なにか白いモノがくねくねゆらゆらとうごめいている。
ビニールテープの束に下から強い風を当てた感じ?
それとも人間?
とにかくずっとくねくねくねくねと動いている。

でも別に漏れは怖くもなんともなかったんだ。
特にそのくねくねに興味も湧かなかったから
ギンを引っ張って帰ろうとした。

でもギンはやっぱり動こうとしない。
それどころか
『ワンワンワン!』
とけたたましく吠え始めた。
しかもくねくねの方向に向かって行こうとするもんだから、
その強い力に幼い漏れは思わず綱から手を放してしまった。

その瞬間ギンは、凄い速さで田んぼのあぜ道を走り抜けてしまって
あっという間に見えなくなった。

355349 [sage] :03/07/22 10:37
『ギン!ギン!』
呼んでも戻ってくる気配もない。

ギンを追いかけようとあぜ道に入ろうとしたとき…

ガシッ

といきなり腕を掴まれた。
振り返ると知らないじいちゃんがすごい形相で腕を掴んでいた。

『行ってはなんねぇ』
強い口調で言われると、
このじいちゃんはこの田んぼの持ち主で勝手に入るな!
と怒っているのかなと思った。

『でも…犬が…ギンが…』
泣きそうになりながらもそう言うと、
『○○の孫か。犬はかわいそうだが…。俺が家まで送ってやる』
(後で分かったけど、○○ってのは実家の屋号らしい)

356349 [sage] :03/07/22 10:37
そのじいちゃんは、実家につくまでつかんだ腕を離してくれなかった。
漏れはよく分からないけど、何か悪いことをしでかしてしまって
怒られるもんだと思っていたからずっとべそべそ泣いていた。
歩いてる間、そのじいちゃんはずっと無言だった。

実家につくと、じいちゃんとばあちゃんが出てきた。
その人と二言三言何やら言葉を交わすと
(まだべそべそ泣いていたし、怒られると思っていたので
その会話は覚えていない…)
じいちゃんは真っ青になりばあちゃんは泣き出してしまった。

その人は帰るときに
『犬で良かった。気をつけてくれ』
みたいなことを言い残していった。
じいちゃんとばあちゃんはしきりにぺこぺこと頭を下げていた。

357349 [sage] :03/07/22 10:38
その後も漏れはギンを置いてきてしまったことにべそべそと泣き続け、
『ギンが…ギンが…』
と言うとばあちゃんも泣きながら
『ギンには悪いことをしたけど、お前が帰ってきてくれた
だけでも良かった。もう田んぼには近づいちゃいけねぇ』
と言った。
何が起こったのか理解できなかったけど、
幼心にギンはもう帰ってこられなくなったんだな
ってことだけ理解できた。


次の日、漏れの家族は急いで荷物をまとめて帰った。

358349 [sage] :03/07/22 10:38
あれから十数年、この思い出は
『くねくねの恐怖』というより『ギンを放してしまった』ということが
脳裏に焼きついて離れない。
特に夏になるとどうしても思い出してしまう。

口に出すこともいけないような雰囲気で、
友達なんかに話すこともなかったけど
数年前、思い切って両親にそのことを尋ねてみた。

そのことを口にした瞬間、両親の顔色が真っ青になるのを見た。
しかし
『そんなことあったかな。覚えていないな』
だそうで。

じいちゃんもばあちゃんも数年前に亡くなり、
今となってはもう確かめようのないこと。
自分としては、くねくねよりも
ギンがどうなったのか知りたかったんだけどね。


これで終わりです。
怖くもない思い出話に最後まで付き合ってくれて
どうもでした。


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