609本当にあった怖い名無し :2006/03/05(日) 06:56:17 ID:pCXz1xyh0
昔、長崎で商売をしていた伊勢屋に、仲のいい中国人が帰国の別れを告げにやってきた。
 挨拶が済んだ中国人は、帰りがけに土蔵の石垣をじっと見ていたが一つの青い石を指さして、「この石を譲っていただけないでしょうか。」と真剣な顔をして、伊勢屋の主人に言った。

 主人はびっくりして、「この石をとりますと、石垣が崩れるのでそれだけはご勘弁ください。」と言って断ると、その中国人は百両出すと言い出した。

 それを聞くと伊勢屋の主人は急に欲がわき、一千両ならばというと、中国人は考えさせてくださいと言って、中国に帰って行った。

 主人は、中国人がああいうからにはきっと値打ちのある石だろうと、その青い石をとって磨かせてみた。だが光りもしないし、割ろうとしたが、堅すぎて、普通の人ではなかなか割ることができない。
変に思った伊勢屋の主人は石屋を呼んで半分に割らせてみた。
すると石の中から水がでて、それと一緒に赤い金魚のようなものが二匹飛び出してきてすぐに死んでしまった。

 その次の年、あの中国人が、三千両持って伊勢屋にやってきた。

 「あの石をぜひ三千両で譲ってください。」と言ったが、伊勢屋の主人は、実はこれこれしかじかで石を割ってしまったと言った。

 これを聞いた中国人は、涙を流して残念がり、「それは惜しいことをされました。実はあれは「魚石」という、世界に三つとはない貴重な石でした。
あれを気長に周りから磨き上げると水の光が中から透き通って二匹の魚がその間を遊び回るという、美しいものです。
朝夕それを見ていると、心が落ち着き、長生きをすると言われ、中国の高貴な人たちがほしがっていました。」

「しかしただの金魚を見て、どうして長生きできるのでしょう。」

「いや、中にいる魚は金魚ではなく、我々には知ることのできない生き物です。
金魚がどうして石の中に何千年も生きておることができますか。」

伊勢屋の主人はびっくりしてしまった。


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